現在、某書の翻訳をやっており、文中で気になる記述があったので裏取りをすべく、カプリコーン・パブリケーションズの「The Czechoslovak Army  1945-1954(チェコスロバキア軍 1945-1954)」をM.S.モデルズさんより通販にて購入しました。

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 恥ずかしながら、こんな本が出ていたことを知らず、検索して見つけて海外通販しようと思ったら、たまたまM.S.モデルズさんに在庫がありまして。注文すれば2~3日で届くという利便さと、すぐ読みたい欲望が勝ってポチりました。
 
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 首都プラハがソ連軍によって解放されたためか、チェコスロバキアは、戦後すぐに共産化されたと思われていますが、ソ連の影響力こそあったものの、戦時中にロンドンに置かれていたチェコスロバキア共和国亡命政府の長であったエドヴァルド・ベネシュが1945年に帰国して大統領に就任し、国民戦線内閣が成立したため、東西どちらの陣営にも属さないという立場でした。
 独自の国産戦車の開発も目指しており、1948年には軍から提示された仕様に基づいて、CKD社とシュコダ社が競作で30t戦車の試案を出していました。

 この本では空軍と陸軍を紹介していますが、そんな政治的な立場を反映して装備もソ連とイギリスからの供与と旧ドイツ軍の置き土産(使える物は最後まで使おう精神?)で、戦車はクロムウェルとT-34-85とIV号戦車、飛行機もスピットファイアやモスキートがあるかと思えば、ソ連のラヴォーチキンLa-5FNやペトリヤコフPe-2爆撃機がいたり、メッサーシュミットBf109のエンジンを換装したCS-199がいたり、輸送機はタンテだったりと闇鍋のような状態です。

 歩兵の訓練中の写真では、戦車はクロムウェルで歩兵の手にはMP44突撃銃、被っているのは戦前のチェコ陸軍用のM34ヘルメット。もし、このジオラマ作って、どっかの展示会に持って行くと「時代考証が出鱈目ですね」とか言われること必至です。

 終戦の翌年に行われた選挙でチェコスロバキア共産党が第一党となると企業の国有化が推進されるなど国全体の雰囲気が怪しくなり、1948年6月のベネシュ大統領の辞任後には、共産党議長のクレメント・ゴッドワルドが大統領となって共産党の単独政権に。あとは1949年にはT-34-85のライセンス生産が始まり、転げ落ちる石の如く東側陣営の一員となり、当然、当初目論んでいた独自の国産戦車案も彼方に消え去ります。

 終戦直後の東側軍隊という、なかなか陽の当たらない題材ですが、こういう本はなくなると二度と手に入らないので、気になる方は入手しておくと損はないと思います。

 これを読むと、チェコスロバキア軍のクロムウェルMk.IVとMk.VIIがカッコよくて、タミヤのキットがあるのにSKPが簡易インジェクションでクロムウェルを出した理由がわかります。