GUMKA工房記

模型の企画・設計とロシアのレッドアイアンモデルズの代理店をやっている「GUMKAミニチュア」の備忘録を兼ねたブログです。雨が降ると電車が止まるJR武蔵野線の新松戸と南流山駅の中間辺りに事務所はあります。近所に素材や塗料が揃う模型店がありません。最近、昔からやっている本屋が閉店しました。

カテゴリ: こんな本を読みました

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 かつて黒澤明監督の映画「影武者」が公開されたとき、多くの日本の映画評論家はクライマックスであろう騎馬合戦のシーンが、両軍の衝突直前までカメラが回りながら、次のシーンで、いきなり死屍累々の光景となるのを「見せ場がない」と厳しく非難しました。

 しかし、台湾人の友人は「見る者それぞれの心に、壮絶な戦闘を思わせる実に効果的な演出だ」と真逆の高評価でした。

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 1990年代初めに講談社の月刊アフタヌーンに連載されていた台湾人作家の鄭問(チェン・ウエン)の「深く美しきアジア」を初めて読んだときは、思わず身を乗り出しました。当時、香港のドラゴンモデルと付き合い始めたばかりで、彼らの思考パターンが、よくわからなかったのですが、この作品の登場人物に、そのヒントが満載されていたからです。

 全5巻でコミック化され何人かの漫画好きに進めたのですが、多くの感想は「1、2巻は意味がわからない。3巻以降のファンタジーぽい話は良い」

 奥付で著者も触れていますが、途中から編集者が指導して、日本の読者に受け入れ易いように内容を軌道修正したようです。しかし、香港人や台湾人と仕事をする人にとっては、1巻と2巻のおもしろさは尋常ではありません。敢えて言います。「3巻以降はクズであると」

 主人公である疫病神の百兵衛は、係わる周囲の人々を全てを不幸にする運命ですが、本人は無欲の善人です。

 一方、配下の魔導師、機械元帥、忍者将軍とともに、秩序管理された理想社会の建設を企てるのが、理想王です。「1人を殺すは金のため、10人を殺すは恨みのため、100人を殺すは理想のため」理想社会の建設の理念を彼は語ります。

 前半のクライマックスは、2巻に掲載されている百兵衛の裏人格である幸運王と理想王の一騎打ちでしょう。その体に触れる者、全てを幸福にできる幸運王は、その圧倒的な幸運の力で触れた敵の脳血管を破裂させて死に至らせることが可能で、一度は理想王を追いつめたこともあります。

 物語では幸運王が理想王の居城に突入して、両者の直接対決となります。「何者も、この幸運王の力は阻止できん!」自信満々の台詞と共に理想王との闘いに臨む幸運王。一方、密かに幸運王の打倒策を準備していた理想王。壮絶を極めるであろう二人の対決はどうなるのかと、わくわくして、ページを開くと「えっ?」そして理想王の言葉は「自信を失った者は死人と同じこと」「私は死人まで殺そうとは思わない」

 冒頭の影武者を評した台湾人の友人の顔が蘇りました。なるほど。日本人にとって肩透かしなこの決着は中華圏の人には、きっと名勝負なのだろうなと。

 香港・台湾と接点のある方は、機会があったら、ぜひ2巻までを読んでください。普通の人は、たぶん意味がわからずに時間を損したと思うでしょうから猫跨ぎしてOKです。

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 私がやっていた模型店時代のHPを読んでいた方は御存知でしょうが、中西さんという変な友人がおりまして。身長を含めて、外見は元ヤクルトの古田選手似な几帳面な性格で、あだ名は見た目そのまんまの「のびた君」

 昔は毎年、沖縄や奄美諸島に採集旅行に行っていたほどの昆虫採集マニアでしたが結婚して止め、今は1/43欧州レジンカーを作りまくっています。そのあまりに几帳面な性格に起因する伝説を沢山持っている愛すべき人物ですが、今回また新たな伝説が。

 新年早々、中西夫婦連名で宅配便が届きました。年末に「ほんの気持ちだけど、引越しのお祝いを送るから」との電話があったので、すぐに開けてみるとセンスの良いペーパーナイフ、革製キーホルダーや北欧製の調味料入れセットが。

 N氏の奥さんは旅行会社に勤務しており、添乗員として各地を巡っているので、こういう物のセレクトは見事で、どれも嬉しい品物でした。ふと箱の底を見ると大きめな茶封筒があり、中には1冊の本が。タイトルは「増補版 世界のザリガニ飼育図鑑」「なぜに?ザリガニ??」

 御礼の電話がてら、ザリガニ本を送った意図を尋ねると「昔、フィンランドに行ったら、現地でザリガニの解禁シーズンだったけど、やたら値段が高くて、あんなモンに高い金を払うフィンランド人の気が知れないとか言ってたでしょう?」

 確かに言いました。2004年にドイツ軍の8,8cm対空砲の取材で8月末にフィンランドに行ったら、丁度、ザリガニの解禁のシーズンだったようで、スーパーや市場で沢山売られていました。日本の松茸や中国の上海蟹同様、ザリガニはフィンランド人にとって季節の高級食材で、スーパーで一尾600~1,000円、レストランで食おうものなら一尾1,500~2,000円ほど請求されます。
 子供の頃、スルメの足やら塩鮭の皮で、アメリカザリガニをワンサカ釣った私にとっては「なんで?」もちろん食べてはいません。だってザリガニですよ、ザリガニ。

「話を聞いて気になって調べてみたんだけど、彼らが食べているのは、ターキッシュ・クレイフィッシュっていう冷水系ザリガニで、日本にいるアメリカザリガニとは根本的に種類が違うんだよ」

「北欧では天然物は厳しく保護されていて、養殖が行われていたりロシアや東欧から輸入もしているんだよ。んで、その本に本物の写真や詳しい生体が載っているから、きっと喜んでもらえると思って贈ったんだよ。これで長年の謎が解けたでしょう?」

 まあ、生き物は好きだし、キレイな写真満載なので、おもしろい本だとは思いますが、ザリガニの種類が違うとかいう話は電話やメールで済むんじゃないかい?

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 模型店の元バイトにして、カメラ友達の山下君のお薦めで「安原製作所回顧録(安原 伸著 えい出版社)」を読みました。安原製作所は、1997年に創業した世界最小のカメラメーカーで、なんと個人営業でした。

 オートフォーカス一眼レフ全盛の時代に趣味性の強い「安原一式」というマニュアル・レンジファインダー機を開発し、告知や広告はホームページのみ。販売も直販というユニークな方法で展開し、当時はカメラ雑誌だけでなく、新聞や経済誌でも幅広く取り上げられました。しかし、同社の二番目の製品「秋月」の開発中に時代のニーズが銀塩カメラからデジカメへと急激に変わり、2004年にカメラメーカーとしての業務を終了します。

  同社に関する様々な記事や報道を読んでも謎だったのは、「個人営業でカメラメーカーは回せるのか?」とか「生産を担当した中国企業との関係は?」でしたが、さすが本人が書いているだけあって、一気に判明しました。自分も香港人や台湾人を相手に仕事をしているだけに、頷ける箇所は多かったです。

 我々、弱小レジン模型メーカーと似た部分も僅かながらあり、物作りに関わる方は読んで損ないと思います。

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 国産バイクが不振の昨今、ハーレーダビッドソンだけは売れているそうです。私と同年代の40代後半から50代前半で、1980年代にバイクに乗っていた人ならハーレーには良い印象がないでしょう。

 当時、AMF傘下のハーレーは高価なのに品質は問題だらけ。ツーリング先で故障したハーレーの横で立ちすくす、いかにもな格好をしたライダーを見たのは一度や二度なんて甘いもんではないです。

 オイルがジワジワどころかポタポタと漏れたり、急にエンジンが掛からなくなったり、エンジンから異音がしたりと、あらゆる故障が発生するのですが、部品供給や専用工具の問題で、普通のバイク店では修理できません。かくして輸入バイク専門店で高い修理代を払うか「安く直してやる」と囁く怪しげな修理店に運を委ねる羽目になるのですが、どっちにしろ、また壊れるので、まさに無限地獄。

 パンク修理2万円だの、OHではなくエンジンをちょいと整備するだけで20~50万円、転けたらン十万円だのの、高い修理代と言い値の部品代の横行が都市伝説化しており、ハーレーを買うのは余程の好事家か何も知らない金持ちだけと言われており、当然、憧れの対象とは程遠いブランドでした。

 もちろん、今のハーレーが20数年前とは比較にならないくらい品質向上し修理代や部品代も明朗で、サービス網も改善されてることは頭では理解しています。ただ、若い頃に見た数々の悲惨な光景や怪しげな噂話は簡単に記憶から消去できません。だって人間なんだもん。

 そんな印象が多少は変わるかと思い、日本経済新聞社から出版された「なぜハーレーだけが売れるのか:水口健次著」を読みました。出版元からビジネス本かと勝手に思っていましたが、内容はハーレー・ジャパンの奥井社長への礼賛のオンパレードで、ハーレーファンなら随喜の涙を流すでしょうが、冒頭に書いたような思いしかない自分にとっては「なんだかな~」が正直な感想です。

 インタビューや資料を中心に成功談を解説するのは、この種のビジネス本のセオリーですが、参考になるか否かは、著者の客観的かつ的確な分析力と文章力にあります。残念ながら、この著者は「戦略デザイン研究所代表取締役所長」という、私なんぞは足下にも及ばない御立派な肩書きをお持ちですが、インタビューは浅い質問ばかり。こんな御大層な肩書きがなくとも、もっと鋭い突っ込みや質問ができるライターは沢山いるでしょう。せっかくの本人へのインタビューも合いの手程度の茶々を入れるだけで、途中に深い私見や分析はほとんどありません。

 文章も読み辛くはないものの、サラサラと流れる感じで心に残るものはナシ。行間に含みを持たせる筆法も、読者に余韻を残す言い回しも無縁です。すべての事柄を「奥井戦略」という単語で簡単に片付け、巻末に高校生の感想文程度のまとめを書いたうえで導いた結論は「奥井リーダーシップは個性的なんです」このおっさん、大丈夫か?

 仮にハーレー・ジャパンの新入社員に読ませる教材なら、この内容でもOKですが、一般書店で売る本でこれは、あまりにもお寒い。もしかして、ハーレー・ジャパンが店頭やイベントでパンフレット代わりに配るために、一定部数をまとめて買い取る契約でもあったのかと邪推したくもなります。


 もちろん、この本を読めばハーレーの勝因が「世界観の構築」「価値観への共鳴」「価格の保証と維持」「イベントによる新規顧客の開拓」「販売店の管理と教育の徹底」にあること位はわかります。

 村社会が大好きがDNAに組み込まれている日本人は組織や集団への帰属意識が強いので、ある程度の資金を投じて価値観が裏付けされた閉鎖的な組織なり集団を構築し、そこに誘い込んで組織の発展ぶりと充実した(ように見える)人間関係を見せて、自分も仲間になりたいと思わせれば商売的に成功するということは知られています。ハーレー・ジャパンの展開は、まさこれで似た例が東京ディズニーランドです。

 経済素人の私が知っている程度の知識なんだから経営や商品戦略を学んだ専門家なら、常識以前のことでしょう。それをあたかも大変な新システムのように書き、「奥井リーダーシップは個性的なんです」で結論。「なんだかな~」久々に読んでがっかりした本でした。

あ、当然、ハーレーへの思いも変わっていません。

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