GUMKA工房記

模型の企画・設計と資料同人誌の販売をやっている「GUMKAミニチュア」の備忘録を兼ねたブログです。雨が降ると電車が止まるJR武蔵野線の新松戸と南流山駅の中間辺りに事務所はあります。近所に素材や塗料が揃う模型店がありません。最近、昔からやっている本屋が閉店しました。

カテゴリ: ミリタリー

 
 昨年頒布したズリーニィ資料同人誌ですが、その後に判明した情報を

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 52ページに掲載された写真でズリーニィ先行量産車(非装甲鋼板製)の操縦手ハッチから顔を出している人物ですが、実は1944年のブダペスト防衛戦で無残に破壊されている有名な「シャーリカ」号の車長である第1突撃砲大隊第3中隊長ラーツ・ティボル中尉だそうです。 


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 同じく70ページのブダペスト市内のヴェールメズー公園で破壊されたラーツ・ティボル中尉の「シャーリカ」号です。

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 婚約者のシャーリの愛称が由来でラーツ中尉はブダペスト防衛戦で捕虜となり、ソ連の捕虜収容施設に送られましたが、そこで
3回の脱走を試み、最後の脱走時に歩哨から銃撃されます。その怪我が原因で、敗血症性ショックを起こして1945年2月に病死します。ラーツ中尉は部下たちに、ソ連の甘言は絶対に信じるな。チャンスがあれば脱走しろと言っていました。


 増刷する際に増補改訂するのが一番なですが、いかんせんハンガリーの自走砲という厳しいアイテムだったので完売までは、しばらく掛かりそうなので御知らせさせていただきました。気になった方は、ぜひ「ハンガリー陸軍 40/43.M 突撃榴弾砲ズリーニィ」をご覧ください。

*同人誌なので、一般書店やAmazonでは売っていません。



 大変に長らくお待たせしました。
新刊資料同人誌「ソ連の最優秀主力戦車T-80Uと派生型」が12月上旬に頒布開始です。
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 T-80BVの改良型として1985年から量産されたT-80Uは、ガスタービンエンジンを搭載し、主砲は125㎜滑腔砲で新型の爆発反応装甲(ERA)のコンタークト5を装着しており、ソ連時代に開発された主力戦車としては、最優秀と称えられました。しかし、ソ連崩壊後は、軍の予算も大幅に縮小され、T-72Bの3倍もの車両価格と燃料消費量が多いガスタービンエンジンは、運用コストが高すぎるとされて、新生ロシア陸軍の標準装備とはなれず、1998年に生産が終了しました。
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 本書は写真を中心にT-80Uを解説する内容で、簡単な開発史、細部や車内を含む実車写真、T-80UK指揮戦車、T-80BVを近代化改修したT-80U-E1、TMT-K/-S地雷処理アタッチメントを紹介しています。

 解説はロシア人研究者で、オスプレイ出版で実車のカラーイラストを手掛けているアンドレイ・アクセーノフ氏で、これまでの国内出版物にはない様々な新情報が盛り込まれており、
写真はアンドレイ・アクセーノフ氏の他にアンドレイ・マールイシェフ氏にも御提供いただきました。判型は前作ズリーニィ本よりも大きなA4サイズで、フルカラー80ページ(表紙を入れると84ページ)収録写真数は120枚以上で写真解説には英文も付きます。

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 頒布価格2500円(本体価格)で一般書店での取り扱いはありません。GUMKA直販サイト、各模型店、同人誌専門店でお求めください。


 T-80U/T-80U-E1の資料同人誌ですが、アンドレイ・マルイシェフ氏からT-80Uのインテリア写真を御提供いただけることになりました。

 マルイシェフ氏は、ロシアのファッション業界で活躍中のカメラマンですが、基地公開日や兵器展示会に行き、戦車や航空機の写真を撮るのが趣味だそうです。

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 ロシアのAFV研究者でカメラマン&イラストレーターでもあるアンドレイ・アクセーノフさんと共作で冷戦期~現用のソ連・ロシア戦車、大戦中の戦車・トラック・軍用自動車の資料同人誌を年に数冊、シリーズ化して刊行していきます。

 前作のズリーニィ本とは異なり、実車開発や構造に関する文章を減らして解説付きの細部写真集みたいな内容を目指しています。

 第一弾は、T-80UとT-80U-E1で「T-80UってT-80BVのレンガみたいなERA装甲が変わった程度じゃないの?」という方も多いかと思いますが、これが結構、違います。


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 写真の解説もアクセーノフ氏御本人が担当しているので、各装備の正確な名称や「砲塔の上にある、これは何に使う物なの?」がよくわかります。現在、翻訳&編集作業中で、今年5~6月頃に販売予定です。どうかご期待ください。



 


 発端は去年の4月、模型店時代のお客さんだったYさんから「ズリーニィの資料本、GUMKAでやりませんか?」と提案されたことでした。
 その後、ハンガリーの研究家コヴァーチュハーズィ・ミクローシュさんの原稿が届き、読んでみると非常におもしろく、当初は原稿を翻訳して、30枚ほどの写真解説を書くだけだから、秋には出版できるなと気楽に考えてスタートしました。
 
 しかし、翻訳文の裏取り作業(地名や階級は正確なのか、他資料との整合性はどうかなど)と、それに伴う加筆修正をしていたら、どんどん時間が過ぎて、その間に収録できる写真も増えてきたので
 
「ズリーニィの本なんて、そうそう出す機会はないんだから、どうせ出すなら開発史だけでなく、構造も詳しく解説して、写真も各生産タイプごとに分け、細部写真も掲載しよう」
 
 かくして1年以上となりました。自分でも悪い癖だなという自覚はあるのですが、こればかりは治りそうもありません。

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 予想外だったのは原稿・写真解説が全て終了し、あとは編集だけという段階で、担当予定だったデザイナーさんより、本業が多忙で手が付けられないと言われたこと。

 これは秋まで出版が遅れるなと一時期は諦めたのですが、フェイスブックの告知記事を読んだ編集者の加藤武さんが急遽、作業を引き受けて下さり、レイアウトをし直して90ページ以上あった原稿を74ページに減らし、印刷所まで手配してくれて、ただ、ひたすら感謝しかありません。
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 内容は開発史と構造の解説、ロシアに残る実車の細部写真、試作車、先行量産車、第1生産ロット(1943年型)、第2生産ロット(1944年型)それぞれ形式別の写真、新考証に基づくカラー塗装図など。

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 B5版74ページ(表紙を入れると78ページ)カラー9ページ、カラー正面図4点、カラー三面塗装図3点、インテリアのカラー写真、貴重な大戦中のカラー写真2枚の他、収録モノクロ写真は100枚以上。頒布価格は2000円です。 

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 同人誌のため一般書店での取り扱いはありませんが直販サイトの他、下記の模型店でも販売しています。
 
 イエローサブマリン秋葉原本店☆ミント スケールコーナー(東京都:秋葉原
 キヤホビー(東京都:荻窪
 サニー(東京都:下北沢)
 ホビーランド(大阪:本町)
 マキシム(千葉県:市川)
 
同人誌専門店「コミックとらのあな」でもお求めいただけます。

 

 

 5月20日東京大学五月祭での講演用の原稿を書いているとき、過去の資料を確認するうち、いろんな物を発掘しましたが、その中で「これは!」というネタを紹介します。

 
 私の持っている資料の多くは、社会主義国時代の東欧やソ連の友人から送ってもらったもので、PCもメールもなかったので、郵便でやりとりをしていました。

 チェコポーランド、東独など東欧から発送される郵便物は、手紙も本も写真も問題なく届くのに、ソ連からは雑誌や本はともかく、手紙は遅配や行方不明が、たまにあり、特に戦車の写真が同封される手紙は高い確率で行方不明(未着)になりました。

 ロシア人の友人によれば、本来、第二次大戦中の戦車の写真に関しては、機密もなく問題ないはずなのに、西側行きの手紙に写真が同封されているとわかると、当局によって検閲のため開封され、検閲官は大戦中の戦車か現用戦車かの区別ができないので、とりあえず没収するとのことでした。

 受取る側の私は「まあ、ソ連だからな」と諦めていましたが、発送元である彼は、この仕打ちに、かなり腹を立ており「当局の裏をかく」と息巻いておりました。
 
 ある日、彼から「次回は、雑誌と一緒にIS-3の写真を送る」と手紙が届き、翌月、ソ連の模型雑誌と共に一冊の切手帳が送られてきました。
 
 
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 大祖国戦争がテーマの切手ばかりだったので、最初はプレゼントかな?と思いましたが、一枚の切手が浮いているなと思い、何気なく触ると
 
 
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 あ、IS-3のカラーポジがこんなところに…
 
 
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 これじゃ、まるでスパイ小説です。

 彼によれば、IS-3は第二次大戦中の戦車とは言い切れない微妙な存在なので、当局に没収されないよう工夫したとのことですが、いやいや、そういう問題じゃなくてさぁ…

 このままエスカレートされると彼が逮捕されかねないので、なんとかせねばと考え、ソ連から東欧に写真を送るのは問題なかったため、一旦、チェコの友人宛に送ってもらい、そこから日本に転送する方式に変更し、以降、時間は余計に掛かるものの、無事に写真が届くようになりました。

 もし、私が同じ状況なら、当局に目を付けられるような真似はしませんが、彼曰く「この程度なら逮捕はされない」「万一、呼び出されたら、もっとルールを勉強して社会主義を担う労働者たる誇りを以て職務を遂行しろ、と抗議してやる」とのこと。逞しいのか、アホなのか、反骨精神なのか、はたまた、そういう国民性なのか?

 あまりに衝撃的だったので、切手帳ごと30年くらい保管しておきましたが、講演のネタに使わせていただきました。

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