GUMKA工房記

模型の企画・設計と資料同人誌の販売をやっている「GUMKAミニチュア」の備忘録を兼ねたブログです。雨が降ると電車が止まるJR武蔵野線の新松戸と南流山駅の中間辺りに事務所はあります。近所に素材や塗料が揃う模型店がありません。最近、昔からやっている本屋が閉店しました。

カテゴリ: 1/35 マークB中戦車


 人生の楽しみの半分以上が美味しいものを食べることと、気心が知れ合った仲間と馬鹿話をすることだったので、脳血管疾患で言葉が話せない、物が食べられない状態になって、かなり精神的に落ち込みました。当然、模型製作なんぞ作る気には到底なれず、このマークB中戦車も随分と前に自作デカールは完成したものの、ずっと作業机の上に放置していました。


 そんな状態でしたが、三週間ほど前からリハビリの成果で言葉や咀嚼が、かなり回復し、それ共に製作意欲も湧いてきました。丁度、三年ぶりに東京FVの会が開催されるので、それに間に合えば、労農赤軍塗装のMk.Bを持っていくぞ!とやる気になって、マースキングに着手しました。

 マークBの特徴的な迷彩を再現するためのマスキング作業では、ガイアノーツのマスキングゾル「マスキングコートR」が活躍してくれました。もともと、縦横比のバランスがおかしいキットでしたが、それに合わせて細部のモールドも、いろいろいじってあって、どうあっても写真どおりの迷彩パターンは再現できないことがわかり、製作意欲が萎え、結局、東京AFVの会までには完成せず。

 それでも、会で様々な作品を見て英気を養なったとこで、懐かしい知り合いと再会して駄話を。

「……そういえば、前に作ってたマークB、どうなったの?デカール問題は解決したんでしょう?」

「それがキットの縦横比のバランスがおかしくて、それに合わせて細部のモールドも、いろいろ変更しているんで、どうあっても写真どおりの迷彩パターンは再現できないことがわかって、製作意欲が萎えたの」

「…そんなの誰もわからないから、適当でいいんじゃない? アイテム的に参考にして作るモデラーもいないだろうし」

 言われてみれば、そうだよな、ということで、始めました。

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 基本塗装が終わったので、これからウエザリングです。

 マークB中戦車を使用した軍隊は本国のイギリス軍、バルト三国のラトヴィア軍、イギリス軍から鹵獲し、再使用した労農赤軍だけですが、この中では労農赤軍の二色迷彩とハンマーと馬鋤赤星マーキングが一番派手で、Mk.Bの異形にも似合っている気がします。

 一説によると、この独特な迷彩の考案者は、ロシアン・アヴァンギャルドの一翼を担ったデザイナーである巨匠アレクサンドル・ロトチェンコだそうです。
ロトチェンコ

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マークB中戦車のデカール自作記事で手持ちのALPS純正Mac OS7.6.1用のドライバを使うために格安中古のPowerBook2400c3400cを物色したところジャンク品は数千円なのに、ちゃんと動く物は意外と高かったので断念した話は書きましたが、実は以前はPowerBook 3400cのオーナーでした。

 模型店時代、原稿の締切が近いと店頭で必死になってカタカタやっていたので覚えている方もいるかもしれません。僅か1年しか生産されなかった短命な機種ですが、デスク機と変わらない性能のノートPCということで、とても重宝していました。

 ところが15年前のある日、突然起動しなくなりました。マニュアルに書かれているトラブルシューティングを試みるもダメで、
すぐに秋葉原にあったMacintoshの修理専門店に持ち込みました。診断結果は2.5インチHDDが逝ったとのことで、提示された見積もりはHDD交換とデータ復元で結構な金額だったため、修理は諦めてiBook G4を買いました。


 ただ様々な仕事をPowerBook 3400cでやったので、売ったり処分する気にはなれず、そのまま手元に残しておいたのですが、令和のこの時代に、
PowerBook 3400cを修理する記事を見つけまして。


 それによると起動しない場合に真っ先にやることが内臓バッテリーの遮断とあったので分解して試してみたら、それだけで、あっさり起動して15年ぶりに懐かしい画面を見ることができました。

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 大日本絵画から出版されているオスプレイ出版の翻訳原稿はクラリスワークでしっかり全冊分が残っていました。CANVASで作成した1/35シュビムワーゲン128や八九式中戦車のレジンキットのパッケージやインストの原稿もあって、私とGUMKAミニチュアの歴史そのもの。某修理専門店はHDD破損との診断でデータ復元とか言ってたけど、全然、問題ないよ?

 あとはALPS純正のMac OS7.6.1用のMDプリンタードライブを探し出してインストールすれば、MD-1300が使えることになるのですが、マークB中戦車用の馬鋤とハンマーの国籍マーク、もう作っちゃったんだよね。


 労農赤軍の馬鋤とハンマーの国籍マークの自作ができず、長らく製作が中断していた1/35 マークB中戦車ですが、約半年の紆余曲折と試行錯誤の末、なんとか見られるデカールが出来上がりました。これまでの経緯は以下のとおりです。

*象のロケットWindows10用ドライバ+MD1300プリンター

 マイクロドライ・プリンターの駆け込み寺的存在である「象のエンジン」。ALPS製MDプリンターの修理やメンテの他、インクカセットや専用デカールなどの部材も販売し、さらに独自にWindows10用のMDドライバも提供しています。

 私はALPS純正Windows7用ドライバを持っていないので、このドライバをインストールしましたが、どうやっても黒しか印刷できず。
 仕事仲間のタヌタヌ岡田さんから「象のロケットのオリジナル・インクカセットはプリンターが黒と認識する仕様となっているので、それのワインを使えば赤いデカールが印刷できるのでは?」との、ありがたいアドバイスをいただき、さっそく試すもワインはワイン色で赤ではなく、おそらく、これにイエローを合成すれば赤になりそうだけど、合成方法がどうしてもわかりません。

 さらに、このドライバでMDプリンターの使用後、電源をシャットダウンした翌日にパソコンを起動するとブルースクリーンとなり、デバイスの接続もしくは解除方法に問題があったという内容のメッセージが表示されて再起動を求められることがしばしば。ただ、これも常に出るわけでないので対処できず。
 詳しい方によるとWindows10にはキヤノンやエプソンなど各社プリンターの登録機能があるものの、ALPSのマイクロドライ・プリンターは、そもそも登録できないため、幾つかの条件が重なった場合、PC側が問題のあるデバイスを接続したと判断するのでは?とのことですが、私レベルでは完全にお手上げでございます。

*Windows7ノートPC+海外のALPS販売サイトからDLしたドライバ

 次女が学生時代に使っていたWindows7ノートPCをくれたので、海外のALPS販売サイトからWindows7用ドライバをダウンロードしインストールしたものの起動せず。実はドライバは32bit専用で、次女の使っていたPCは64bit。たぶん、起動しない原因はこれかな?これも私レベルではお手上げ案件なんで次へ。

*格安Windows7 32bitノートPC+海外のALPS販売サイトからDLしたドライバ

 「どっかに格安のWindoes7 32bitノートPCないかなか?」と探していたら某ネットオークションにOSのみ、ソフト一切なしのノートPCが3000円で出品されており、ライバル不在で開始値で落札。前回同様、海外のALPS販売サイトからWindows7用ドライバをダウンロードしたものの、ZIPファイルを解凍してインストールしようとすると途中でエラー表示されて、なぜか実行できず。再び私レベルではお手上げ案件。この段階でマイクロドライ・プリンターに見切りをつけました。


*中古PowerBook 2400cか3400c+OS7.6.1用ALPS純正ドライバ+MD1300プリンター

 これは考えただけで実行できなかったのですが、ALPS純正のMac OS 7.6.1用ドライバディスクは持っているので、程度の良さげなPowerBook2400cか3400cあたりを入手してインストールすれば、MDプリンター専用機として使えるじゃないの?と思って中古価格を調べたら、今から20年以上前の機種にもかかわらず、ちゃんと動いて程度の良いものは15000~30000円もするので諦めました。なんでも古いMacintoshはデスク機もノートも熱心なコレクターがおり、特にPowerBook2400cは思い入れがある人が多いのでWindowsノートPCのような値崩れはしないんだそうです。

*ハイキューパーツ製インクジェット用デカール+canonインクジェットプリンター

 結局、大回りして原点に戻り、ハイキューパーツのインクジェットプリンター用のホワイトデカールシートに国籍マークを印刷しました。多くの方々が指摘されているようにデカール自作にはインクジェットプリンターはベストではありません。私もデカールシートに国籍マークを印刷する段階でインクが滲んだり、貼るときに水に浸けたらインクが溶け出したりなど失敗の連続でした。
 インクの滲みは、K-トレーディング製のデカールベーススプレーで改善されると聞きましたが既に絶版品。ところが、仕事のついでに寄ったタムタム千葉店で売っていて(残っていて?)即買い。現在、タムタム千葉店は京葉線の稲毛海岸駅前に移転しており、その際に盛大な在庫処分セールをやったらしいので、今でも売っているかは不明です。「インクのにじみが強力に抑えられる」のコピーは半信半疑でしたが確かに吹き付けると印刷時の滲みは改善されました。自社のミラクルデカール専用を謳っていますが、ハイキューパーツのデカールにも問題なく使えました。

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 てなわけで完成したデカールを貼ってみました。いろいろ課題が残るものの、ようやく途が開けました。



 「OSがWindows7のPCがあれば、マークB戦車のデカールが作れるんだけどな」とボヤいてたら、次女が学生時代に使っていた富士通ノートPCを供出してくれました。キーボードが死んでいるよというので、探してみると某PCショップにデッドストックのパーツがあったので、すぐ手配して交換しました。

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Windows7用のMD-1300ドライバは、海外のアルプスプリンター専用サイトからダウンロードしてインストール。しかし、なぜかプリンターは作動せず。

 「なんでだ?」と検索してみたら、そもそもMDプリンタードライバは32bit環境下でしか使えず、64bit環境では動かないという記事があり、次女からもらったノートPCを確認すると確かに64bitでした。

 仕方ないので今回は、MDプリンターは諦めて、白デカールの上にインクジェットプリンターで印刷しました。
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  MDプリンターは、今後の課題ということで、先に進みます。


 ロシア内戦の赤軍マークBを作る際に避けられないのが銃塔と車体正面に描かれたバンザイ赤星に馬鋤とハンマーの国籍マークです。残念ながら市販品はなく、手描きは難易度が高いので自作デカールがベストです。
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 使用色は赤と白の二色で、今は自作デカールにはインクジェットやレーザープリンターを使う方法が一般的ですが白色が印刷できないのが難点です。

 白色が印刷できるとしてモデラーに重宝されたのがALPSのマイクロドライ・プリンタでございます。大昔、1/35で八九式中戦車のレジンキットを販売したときセットしたデカールを印刷するためMD-1300を入手し、版下を仕事仲間のタヌタヌ岡田さんに作ってもらい、私はデータをもらって印刷だけやってキットにセットしておりました。
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 生産メーカーであるALPSが2010年に全機種の販売を終了し、ドライバの提供もWindows7までで止まったので諦めて封印しましたが、つい最近、サードパーティーがWindows10用ドライバとインク供給をしていることが判明。急遽、倉庫からサルベージしました。
 プリンター本体のコネクターは懐かしのSCSI。今でもSCSI-USB変換ケーブルがアマゾンで買えました。マイクロドライ・プリンタの救世主「象のエンジン」様よりWindows10用ドライバをダウンロードしてPCとプリンターを繋いで電源をオン。エラー表示も出ずプリンターは復活。PC側も、ちゃんとプリンタを認識してます。

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 密かに「勝った!」と思いましたよ。まさか令和の時代にマイクロドライ・プリンターが使えるとは感無量でした。捨てずに保管してて本当に良かったです。
 まずは試し刷りです。描きかけですが国籍マークを印刷します。操作画面がALPSと全く異なっており戸惑いますが画像を読み込ませ、印刷ボタンをクリック。
 独特の動作音の後、印刷終了。「あれ?黒一色になっているぞ?変だな?赤色じゃないぞ?よし、もう一度やり直しだ」でも2度目も3度目も黒一色です。悲しいかな、象のエンジン様のホームページを見てもカラー印刷の詳しい操作方法は記載がありません。(あるかもしれないけど、見つけられなかった)

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全然、勝ってなかったです。敗北です。終わります。


 今回のマークB中戦車はロシア内戦時の赤軍塗装にするつもりですが、困るのが銃塔左右と車体前面に描かれた国籍マークです。厄介なことにソ連といえば誰もが思い浮かべる御馴染みの「赤星に鎌とハンマー」ではなく、それより前の1918年から22年まで使用されていた「バンザイする赤星に馬鋤とハンマー」で別売りデカールはありません。
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 「そのデカールならTAKOMのホイペットに入っているよ」と仰るモデラーさんもいるかと思います。でも御覧のように赤星の形はバンザイをしてないイトマキヒトデだし、ハンマーは柄が長すぎて杖だし、馬鋤もクマムシやトビムシみたいで、これはちょっと…しかも必要枚数は3枚なのに2枚しかなく、どうしようもなければ検討しますが、到底、喜んで飛び付ける代物ではありません。

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仕方なく人生初のデカール自作に挑戦していますが、アナログ人間な私には、原図作成なんぞは拷問も同然。
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泣きたいです。

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