2004年に休刊したチャンプUという中古バイク雑誌がありまして。当時としては珍しくホンダ、ヤマハ、スズキ、カワサキなどのバイクメーカーの広告が一社もないという営業的には、かなり厳しい雑誌でしたが、それを逆手にとって、メーカーに媚びたり忖度しないギリギリな記事や企画を掲載していました。
そんな中で今も語り継がれているのがコラム「ミイラ伝説ー愛すべきウラ名車列伝」です。毎号、各メーカーの不人気車を問答無用で切り捨て、不人気度とミイラ度(認知のなさで忘れ去られてミイラ化した度数)で採点するという、ある意味、無敵なチャンプUでしかできない企画で、バックナンバーが読みたいという声に応えて、出版社のホームページに総集編が掲載されるほど人気でした。
雑誌の休刊によるホームページの消滅後もミイラ伝説の総集編だけは、別のサイトに移転という救済があったものの、やがてそこもサービス終了で再移転。それが幾度かあって、やがて行方不明に。
ところが、先日、国産有尾両生類(イモリとかサンショウウオ)の愛好家に南会津のサンショウウオについての話を聞いているとき「今でこそ野外観察にはスズキのジムニー(軽4WD車)で行くから車中泊もできて大雨でも何の不安もないけど、若い頃はホンダのシルクロードに括り付けたテントと寝袋で野宿してたから、雨の日と冷え込む夜は本当にキツかった」という話からバイク談義になりまして。
シルクロードはバイクブームの1980年代に街中でもオフロードでも使える多目的250㏄バイクとしてデビューしました。今でこそ再評価されていますが、当時は、どっちつかずのコンセプトと中途半端なデザインが不評で、発売から一年も経つ頃には、あっちこっちで新車が半値以下の投げ売り状態でした。
その方も野外観察用の移動手段としてオフロードバイクのホンダ XL250Sかヤマハ XT250の中古車を探していましたが、傷だらけのXL250Sよりも、僅か500㎞しか走っていない極上のシルクロードが遥かに安かったので購入したそうです。新車で半値以下でしたから、中古車はもっと安かったんでしょうね。
しかしながら、シルクロードは安かろう悪かろうではなく、大きなリアキャリアに寝袋やテント、撮影機材などの荷物が沢山積めて250㏄なので高速道路も走行可能。しかもオフロード車っぽい外観なのにタイヤはブロックパターンでないため高速走行も快適で、目的地までは高速道路で行き、現地では未舗装路をゆっくり走って生物観察するという彼の用途にぴったりで非常に重宝したとのことです。
「昔、バイク雑誌にミイラ伝説というコラムがあって、シルクロードもネタになっていましたよ」と話すと「知っています。チャンプUは一度も買ったことないけど、あのコラムだけは大好きで、いつかシルクロードもネタになるだろうと毎号、立ち読みしてました。今でも、ここで読めますよ」と現在のURLを教えてくれました。
久々に読んで、しばし懐かしさにひたれました。ちなみにシルクロードは不人気度90点。ミイラ度90点という評価でしたが、私の愛車CB400LCも当然の如く取り上げられており、不人気度90点。ミイラ度95点とシルクロードを凌ぐ高得点をマークしていました。昔、バイク乗りだった方は是非、ご覧ください。
コメント
コメント一覧 (11)
が・・・トホホ。
ハセガワがなぜ気がふれてKRを出したのかわからないのですが
行くとこまで行って欲しいです。
グムカ・ミニチュア
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普通、雑誌のコラムや記事に自分の愛車が取り上げられると嬉しいものですが、ミイラ伝説だけは別ですね。ZX-4はいいバイクで私も好きですが、世間の人気は圧倒的にGPZ400Rでしたよね。ただ、ミイラ度が75点なのでシルクロードやCB400LCよりはマシで、そこは誇っていいと思います。
KH250/400の次は、250/350ssかなと思っていただけにKR250には驚かされました。とても正気の沙汰ではありません。ハセガワはバーチャロンも「そんなものまで」というくらい追っかけてましたから、そういう企業気質なんですかね?
グムカ・ミニチュア
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グムカ・ミニチュア
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当時、チャンプUは立ち読みしかしておらず不死鳥伝説という記事を全く知らなかったです。そういう背景があったのですね。雑誌が休刊という名の廃刊になってかなりの年数が経ち、パロディ元は雑誌と共に消滅しましたが、ミイラ伝説は今でも読めるのですから、これはやはり多くの人々に愛された証だと思います。
グムカ・ミニチュア
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グムカ・ミニチュア
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FT400でもフラットトラッカーがフラットタッカー、ビッグシングルがシビックシングルになっていましたが誤字誤記の多さは、そういう事情だったのですね。最後の記事のXLV750Rが2000年8号となっているので、もう21年前。今読み返してみても「そうそう」と納得したり大笑いしたり「そういえば某フィギュアメーカーのKさんの愛車がNV400SPだったよな」と懐かしめたりと当時の輝きを失っていないのは、さすがだなと思います。他誌でも似た企画があったものの、誤字誤記を訂正し、今では通じないギャグを直し、さらに新ネタを追加した令和版ミイラ伝説を同人誌でいいから読んでみたいです(熱望)
グムカ・ミニチュア
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幸い中古車雑誌でしたから、新同車から大古車、ポンコツまで様々なバイクに触れることができまして、それはもう輝くほどの思い出になってます。じつは、他のサイトに転載される過程で、どなたかがNo.101以降を何台か追加してくれてましたけど、その分は残っていないようですね。
グムカ・ミニチュア
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当時のチャンプU編集関係者か熱烈なファンの方かな?と思っていましたが、まさかの御本人とは!コメントがいただけて光栄です。こんな嬉しいことはありません。失礼ながら、てっきり切りの良いNo.100で連載終了と今の今まで思っていましたが、その先があったとは…
自動車や家電も然りですが「なんで、こんな企画が通った?」とか「これで売れると思ったのか」というアイテムは物が売れまくっているか余韻が残っている時代にしか存在しないので、今の各社のバイクは良く言えば極めて優等生的、悪く言えば面白味に欠けており、ミイラ伝説のネタとしては困ってしまうかも。
そう考えると1980年代~1990年代は凄い時代だったとつくづく思います。前のコメントでも書きましたが今のネット記事の誤字誤記を訂正し、記憶を頼りにNo.101以降を再現して、さらに新ネタを追加した令和版ミイラ伝説をぜひやってもらいたいです。猫の手程度の力ですが人手が足りないなら、なんでもお手伝いいたします。どうか御検討ください。
グムカ・ミニチュア
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グムカ・ミニチュア
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50~60代のバイク乗りと昔話をして「街でCXB400カスタムを見たことがあるか?」とホンダ・シルクロードとMVX250Fの投げ売りネタが出たら、次の話題はミイラ伝説です。
この記事のシルクロードの元オーナーしかり、つい最近も「ミイラ伝説で”わけわかんないデザイン”と評価されたヤマハXS400 Specialに乗っていた」という方と話して散々盛り上がった挙句の果てに、お二人が異口同音に口にしたのが「また読みたい」「新作をやってくれないかな」でした。それは「もう読めない」「叶わぬ夢」とわかっているからこそです。
仰る「風化の美学」というのも理解できなくもないですが、ふとたまに当時の熱を思い出したくなるときがあります。送り出し手と受け手の認識の違いかもしれませんが、我々の中ではミイラ伝説は風化しない記事です。
いつか内緒話さんの気持ちが切り替わるという僅かな可能性に期待し「また読みたい」「新作をやってくれないかな」を我々は死ぬまで思い続けることでしょう。コメントありがとうございました。新しいミイラ伝説が読める未来を諦めつつも期待しております。
グムカ・ミニチュア
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風化していないのは、バイク好きの魂(って表現すると気恥ずかしいですが)のほうなんだと思います。私自身、40年も前に、山走りやロングツーリングや林道暴走(笑)で出会った景色や空気、におい、音とか、コケた痛みとか、いまだに覚えてますもんね。だとすると……いろいろ考えさせられますね。
グムカ・ミニチュア
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