先日、クラシックカメラコレクターのA氏が昨年末に亡くなったと共通の友人B氏から連絡がありました。もともとA氏はライカやコンタックス、アルパ、ニコンSシリーズなどの王道なカメラを収集していましたが、一時期、ソ連製カメラを調べており、5年前に私が所有しているソ連の従軍カメラマンが使用するFED-Sというカメラを見せて欲しいと頼まれ、その仲介役がB氏(カメラマニア兼モデラー)でした。
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 お会いしたときには、比較用にとアメリカ製ライカコピーのカードンとイギリス製ライカコピーのリードを持参され、おもしろいカメラ話を沢山聞かせてくれました。

 そのときに総額で数百万は注ぎ込んだと語っていたA氏のコレクションがどうなったのかB氏に尋ねると、遺族が不用品買取業者に安価で売ったとのこと。「なんと愚かな」と思いましたが、詳しく話を聞くと仕方ない顛末でした。

 生前、A氏は奥さんと二人の娘さんに「俺が死んだら、このコレクションを売れば葬式代どころか、おつりで三人で海外旅行に行けるぞ」と口癖のように言っていました。しかし、家族にとってカメラは自宅の一室を占領する邪魔で忌むべき存在で、A氏の言葉も全く信じていなかったうえに、葬儀の直後に「生前の御主人から万一のときはカメラコレクションを引き継ぐよう依頼されていた」という長年の友人を騙る薄気味悪い人物が訪ねてきたので、こんな人が来るのなら、一刻も早く処分したいとなり、すぐに来てくれる地元の不用品買取業者の言い値で売ったそうです。ちなみに、この自称親友とやら、A氏の残した住所録に名前もなく、カメラ仲間や会社の同僚、学生時代からの親友に尋ねても誰も知らず、明らかな詐称でした。

 できれば、その買取業者から、ちゃんとしたクラシックカメラ専門店にコレクションが渡り、本当に欲しい人の手に届いたことを望むばかりですが、ジャンルは異なれど、家族から本とプラモを死ぬまでになんとかしろと言われる自分にとっても決して他人事ではありません。

故人の御冥福をお祈りいたします。