模型店を開業して間もない頃の話です。
あるとき、名刺の肩書は不動産会社の社長で優しそうな紳士だけど、運転手と御付の部下がどう見ても堅気ではないSさんという御客さんが来店し、タミヤの1/12フェアレディZと赤い缶スプレーを買って行きました。二週間後、再度来店いただきニコニコしながら
「いや~欲しかったのはフェラーリだったけど、フェアレディと間違えちゃってさぁ」
一瞬、うわ、これは因縁を付けられるヤバいパターンかと思ったら、
「作って楽しかったよ。タミヤは1/12でレーシングカーでないフェラーリは出してないの?」
となって、それ以降、1/12や1/16の大きな車を買ってくれる良いお客さんに。
あるとき、オオタキ(当時は、まだ活動していた)の1/16トヨタ2000GTを頼まれ「これ私の直通だから。(模型が)入ったら、この番号に掛けてよ」とメモを渡されました。当時は、まだ携帯電話が普及しておらず、それまで注文をもらったキットの入荷連絡は会社の代表電話にしていました。
たまたま問屋に在庫がなく、少し時間が掛かったものの、入荷したので教えられた番号に連絡しました。電話に出たのはSさんではない別の男性でした。
「はい」
としか言わないので
「こちらはSさんの御電話でよろしいでしょうか?」
と尋ねたら、ちょっと怒ったような声で
「何でこの番号知ってんだ?お前、誰?」
「Sさんから御贔屓にしていただいる模型店で、御注文をいただいたオオタキのキットが入荷したので御連絡しました」
と説明したものの取り次いでくれる様子はないので仕方なく
「御注文の模型が入ったとお伝えください」
とお願いして電話を切った直後に、Sさん本人から折り返しが。
「ごめんね~マスタ~、不愉快な思いをさせちゃって。口のきき方を知らない奴でさぁ。ちゃんとコツンしとくから許してね」
翌日、Sさんがキットを引き取りに来てくれました。そのときも部下の非礼をお詫びいただきましたが「全然、気にしてないですから」としか言えません。もちろん、コツンは具体的に何をするのか怖くて聞いていません。
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