徳之島産の珈琲豆を使う喫茶店があります。お店の名前は「コーヒースマイル」で、場所は戦艦大和の慰霊塔がある犬田布岬です。

 慰霊塔に行く度に寄ろうと思うのですが、いつも店の前に入店を阻止する悪い二人組がおり、毎回、全然どいてくれないので果たせず。

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 今回、運良く不在だったので初めて入ることができました。

 店主の旦那さんである吉玉誠一さんが島内で珈琲農園をやっており、そこで収穫された珈琲豆を使って奥さんが徳之島コーヒーを提供している…と書いてしまうと簡単ですが、お話を伺うと大変なご苦労があったそうです。

 吉玉誠一さんは宮崎県の出身で珈琲農園をやりたくて徳之島に移住しました。珈琲の栽培に適しているのは北緯25度から南緯25度のコーヒーベルトと呼ばれる地域ですが、実は徳之島は、このエリアから北に外れています。しかし、吉玉さんは島内の植物層から栽培が可能ではないかと考え、最初は徳之島の気候に合った品種探しから始め、たまたま島内で観賞用に珈琲の木を植えていた方から苗木を分けてもらって農園はスタートしました。

 しかし、この苗木があまり実が生らない品種だったので、新たな苗木を探さねばならなくなったり、島内でサトウキビ栽培が盛んになると、そっちが儲かるからと借りていた農地を地主に追い出されたり。なんとか軌道に乗りかけた農園が台風で壊滅的打撃が受けるなど文字どおり苦労の連続の40余年だったそうです。

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 現在、吉玉さんの奥さんが切り盛りしている喫茶店も40年前から営業していましたが、前オーナーが引退するということで店名と共に引き継ぎ、2016年に改装して今の姿になりました。以前は季節限定だった徳之島コーヒーも収穫量が増え、最近は通年提供できるようになったそうです。

 さらに、2017年から味の素AGFや丸紅、町役場が一体となって「徳之島コーヒー栽培支援プロジェクト」始まり、徳之島での本格的なコーヒー栽培を支援してくれることになりました。「主人も75歳。もう10年早く、この話が来てくれれば、苦労が減って楽ができたかもね」と笑っていました。数年後、徳之島産のコーヒーが全国で飲めるようになるかもしれません。

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 犬田布岬に行く途中に道でヤギの親子が放し飼いに。人馴れしているのか車が傍を通っても逃げません。いろいろ気持ちが和んだ犬田布行きでした。