模型店の店頭に立っていた最後の夏ですから、2008年8月の話です。たまに来店してくれる20代後半のお客さん、

「この前、車を買いました」
「車種は何ですか?新車?それとも中古ですか?」

当然の如く尋ねたら、

「詳しくないんで、よくわかんないです。黒い軽自動車ですよ」

 自分の買った車がわからない? 本当か?と思いましたが、ふざけている様子もありません。お話を伺うと奥さんの実家の近所に住んでおり、今までは必要なときは義父さんの車を借りていたけど、この冬にお子さんが生まれるので、自家用車を買うことにしたそうです。
 もともと車には興味がなく、自動車雑誌を読んでも何を選んでいいかわからず。結局、職場の先輩と一緒に某中古車チェーン店に行き、予算を提示して「諸費用込みで、この値段で家族三人が乗れて、荷物がそれなりに積めて、丈夫なヤツ」と言ったら、黒い軽自動車の前に案内され、先輩に試乗してもらい「大丈夫だ」と言ってくれたので、それに決めた、という話でした。

 私らが20代の頃は、車やバイクを買うときは人生の一大イベントで、カタログを集め雑誌を読み漁り、知り合いで実車を持っている人がいれば見せてもらうなど、とにかく買うまでワクワクでした。

「買うとき、ワクワクしなかったですか?」

返ってきた応えは「う~ん、あんまり」

「(店員さんが説明する)専門用語とかわかんなかったし…」

 一週間後、フォード・フォーカスの定期点検だったので営業マンにこの話をしたら、信じられないと言いつつ、

「私たちが、自転車や小型テレビを買う時、ブランドとか意識しないのと同じ感覚ですかね?」

と個人的に納得できるコメントを。

「そんな人ばっかりになったら、我々、自動車ディーラーは困りますよ」






 あれから4年、仕事の打ち合わせに行った先の若い男性社員さんが、やはり自分の車が何か知らない人でした。

「軽のワゴンで、TVで宣伝していたヤツの中古です」

ダイハツ?スズキ?と問うと

「どっちかですよ。うちの上司もそうですけど、50代くらいの方って、車のブランド(メーカー)とか車種とか、やたら気にしますよね」

「ほら、軽(自動車)は、どれも同じでしょう?」

いや、絶対にそんなことないと思うぞ!

激しいジェネレーション・ギャップを感じました。