ソ連邦が建国して間もない頃の労農赤軍の戦車兵は「シェルム(ヘルメット、保護帽)」と呼ばれるブジョノフカ型の革製戦車帽を使っていました。下の写真の向かって右側は士官用の黒色、左は下士官・兵士用のカーキ色の戦車帽で、どちらも正面に赤星が付いています。
黎明期の労農赤軍らしいスタイルですが、本来の目的である頭部の保護には有効でなかったようで、1931年に緩衝用パッドを十文字配置した新しい戦車帽に切り替わります。この1931年型戦車帽は写真が極めて少ない珍品です。
実際に使ってみると1931年型戦車帽でも頭部の保護に不十分だったようで、1934年に緩衝用パッドのレイアウトを全面的に見直した戦車帽が登場します。
中央部と側面に各三本の緩衝用パッドが付いた1934年型戦車帽はイヤホンの装着ができないだけで、戦後まで続くソ連戦車帽の基本的なスタイルを既に確立しています。1936年型が登場した後も無線機を搭載していない軽戦車の戦車兵は、1934年型戦車帽を使い続けたため、情報が少なかった冷戦時代には「軽戦車用の戦車帽では?」と推測する西側の研究者もいました。
(続)