前回の記事の続きで、1936年型戦車帽についてですが、昨秋から義母の容体が悪くなり、補足記事を書き掛けのまま、えらく間隔が開いてしまったので、記事タイトルを変更しました。

 1936年型戦車帽はソ連初の音声通話装置が装着可能な保護帽で、それまでと区別すべく「TSh-4 シェレマホーン」という新名称が与えられました。TShは「戦車用保護帽」の意味です。使用者である戦車兵たちからは、それまでと変わらず「シェルム」と呼ばれました。

 頭部に三本の緩衝用パッドが付く基本的な形状は1934年型戦車帽に似ていますが、耳のフラップ部の内側に71-TK-1もしくは71-TK-3車載用無線機のイヤホンを収納する袋が付きました。71-TK-1と71-TK-3無線機の代表的な搭載車は以下のとおりです。

71-TK-1無線機の搭載車輛
T-38TU水陸両用軽指揮戦車、BT-5TU快速指揮戦車、BT-7TU快速指揮戦車、
T-26TU歩兵指揮戦車、T-28多砲塔中戦車、T-35多砲塔重戦車、BA-10装甲車など

71-TK-3無線機の搭載車輛
T-40水陸両用軽戦車、T-60軽戦車、T-34中戦車1940/1941年型、
KV-1重戦車1939/1940/1941年型、KV-2重戦車など


 1936年型戦車帽TSh-4(シェレマホーン)には士官用の黒革製と下士官・兵士用の布製があります。

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 1934年型戦車帽と比べると、前面の緩衝用パッドが、かなり大型化しています。
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 1934年型戦車帽では三本だった側面の緩衝用パッドが一本になります。
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 TSh-4 1936年型戦車帽の最大の特徴である側面フラップ部の内側に取り付けられた無線機のイヤホンを収納する袋です。

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 こちらは下士官・兵士用の布製のTSh-4 1936年型戦車帽。やはり前面の緩衝用パッドが目立ちます。
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 このTSh-4は一般的ではない仕様で顎バンドがなく、ボタンで締める構造になっています。
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 側面フラップ部の内側に取り付けられた無線機のイヤホンを収納する袋です。



 士官と下士官・兵士の差は戦車帽の材質だけでなく、1935年型ギムナスチョルカ(1935年型野戦服)の色も士官用は鋼鉄色と呼ばれるグレーだったのに対して下士官・兵士用はカーキ色と明確な違いがありました。

 さらに下士官と兵士は、ギムナスチョルカの上にコンビネゾーンと呼ばれる紺色のオーバーオールを着用するのに対して、士官には革製もしくは合成皮革製の黒いハーフコートが支給されました。これは戦車部隊の士官にエリート部隊の指揮官としての誇りを持たせることが目的だったと言われています。

 1941年2月の制服改正で士官用のグレーのギムナスチョルカは廃止され、下士官・兵士と同じカーキ色になります。革製ハーフコートもなくなり、将校にもコンビネゾーンが支給されることになります。  

 しかし、自分が戦前からのベテランであることを示すため、独ソ開戦後も革製戦車帽やグレーのギムナスチョルカ、革製ハーフコートを着用し続ける将校がいました。(続)